聖書地理
【シナイ山】中東シナイ半島に位置し、モーセが十戒を授かったとされる山。標高約二二八五メートル。ヘブライ語では「ホレブ」とも。現在は六世紀に建てられた聖カタリナ修道院があり多くの巡礼者が訪れる一方、正確な場所については学術的議論が続いている。
【葦の海】エジプトを脱出したイスラエルの民がエジプト軍の追撃を受けた場所。海を背後に追い詰められた民を救うため、神は葦の海の水を分けられ、民は露出した地面を歩いてその追撃から逃れた。正確な位置は不明。エジプト北東部の湖沼地帯、紅海北部等、…
【ナイル川】世界最長の大河。アフリカ大陸北東部を北流、エジプトを通過して地中海に注ぐ。赤子モーセはファラオの新生児虐殺から逃れさせるため、籠に入れられて、ナイル川に流された。神がエジプトに下された第一の災いは、ナイル川の水を血に変えること…
【ゴシェン】ナイル川デルタ地帯東部にあった肥沃な土地。ヨセフがエジプトの宰相であった時、父ヤコブとその家族七十人を移住させた場所。イスラエルはここで約四百三十年過ごすことになるが、出エジプト時には二百万人から三百万人まで人口が増加していた…
【パダン・アラム】「アラムの平地」という意味。メソポタミア北部、現代のシリアやトルコの南東部にあったと考えられる。イサクは、パダン・アラムに住んでいたリベカを妻として迎え、その息子ヤコブは兄エサウから逃れるために、伯父ラバンを頼ってパダン…
【マクペラ】「二重の洞窟」という意味。アブラハムが妻サラの埋葬のためヒッタイト人エフロンから買い求めた洞窟と、その周辺の畑地を指す。創世記二十三章に記されるこの畑地の売買は東方世界のヒッタイトの法律に基づく商取引の典型例と言われている。
【ゲラル】カナンの南側境界線にあるペリシテ平原のガザの南にあった町、また地域。アブラハム、イサクともにこの地方に滞在したことがあった。イサクはゲラルでいくつかの井戸を掘ったが、それらの井戸についてゲラルの羊飼いとの間に争いが生じたことが記…
【ハビラ】「砂の地」という意味。エデンの園から流れ出る4つの川の一つ、ピションの流れが巡るのが、ハビラの全土と言われている。この地方は金を豊かに産していた。ハビラという地名はイシュマエル人の居住範囲の東南端を示す場所としても出てくる。
【ベエル・ラハイ・ロイ】「生きて見ておられる方の井戸」という意。エジプト人の女奴隷であるハガルが女主人のサラから逃げ出した際、主の使いが現れた場所であり、その聖書箇所では「シュルへの道にある泉」として登場する。アブラハムの死後、イサクはこ…
メソポタミヤ北部地方。西はユーフラテス川上流、東はハボル川を境とする地方。ここはアブラハムが息子イサクの嫁探しのためにしもべを遣わした地であり、また、ロバと話すという特異な体験をしたベオルの子バラム(申命記二三・四)の故郷でもあった。
【モリヤ】神がアブラハムに現れ、息子イサクを燔祭のいけにえとして捧げるよう命じた際、指定した場所。後にソロモン王は、モリヤの山にエルサレム神殿を建設したとされる。これはエルサレムの東の丘、シオンの山であるが、厳密にモリヤの地の場所は特定で…
【パランの荒野】シナイ半島東部の中央にある荒野で、今日ではエ・ティの荒野と呼ばれる。標高600㍍から750㍍の不毛の台地。イシュマエルはこの荒野に住み、エジプトを脱出したイスラエルの民はシナイ山から来てパランの荒野に宿営した。
【べエル・シェバ】イスラエル最南端のネゲブの町。アブラハムがアビメレクと井戸のことで誓った時に与えられた七頭の子羊に由来。現在のべエル・シェバはエルサレムの南西七七キロの所にあるが、聖書のべエル・シェバはそれより東に三キロほどの所にあった…
【シュル】シナイ地峡の北西部にある砂漠地帯。「シュルへの道」は古代の隊商路でエジプトからべエル・シェバ、ヘブロンを経て北上する。この隊商路にある泉のほとりで、主の使いはエジプト人ハガル(アブラハムの妻サラの女奴隷)に現れ、彼女を慰め、また…
【カデシュ】ユダ、パレスチナ南境にあったオアシス。名前は「聖別された」「捧げられた」という意味。モーセの姉、ミリアムが葬られた地。また、モーセがカナンに偵察隊を送った地。その際、イスラエルは不信仰のため機を逸し四十年間、荒野を彷徨うことに…
【ダマスコ】シリヤ地方の中心、へルモン山の東方に位置する。古代イスラエル王国時代にはアラム王国の首都として聖書に登場する。熱心なユダヤ教徒であったパウロは、クリスチャンを迫害するために、この町に向かう途上、光の中にキリストに出会い、クリス…
【ダン】イスラエル北端の町。南端の町ベエル・シェバと組合わせた「ダンからベエル・シェバまで」という慣用句は「イスラエル全土」を指す表現として旧約聖書に頻出する。北イスラエル王国の初代王となったヤロブアムはこの町に子牛の像を安置する聖所を設…
【セイル】死海からアカバ湾にかけてのヨルダン地溝と砂漠の間にある山岳地帯。名前には「毛深い(樹木が茂った)」という意味がある。創世記ではフリ人の地として、またエサウとその子孫の居住地として登場する。シメオン族はこの地でアマレク人を滅ぼし、…
【ヘブロン】エルサレムの南南西30キロ、海抜千メートルの丘陵地帯にある町。アブラハムが甥ロトと離別した直後に移住したカナンの町として最初に登場。出エジプトの時代にはアナク人が居住していたが、イスラエルのカナンに侵攻の際に、ユダ部族の前に陥…
【ツォアル】ヨルダンの低地に所在した町、近隣のソドムやゴモラと同盟関係にあった。「シディムの谷の戦い」でシヌアルの連合軍に敗れるもその際にさらわれた甥ロトのゆえにアブラハムは彼らを助けた。ソドムとゴモラが火によって裁かれる際、ロトが一時避…
【ヨルダン】ヨルダン川周辺一帯のことを指す。ヨルダン川は北のへルモン山に端を発し、ガリラヤ湖を経由して、死海へ流れ込む。ツァラアトに冒されていたアラムの将軍ナアマンが清められた川であり、イエス様がバプテスマのヨハネによって洗礼を受けられた…
【ゴモラ】聖書中、ソドムに言及される際には必ず対になって登場する町。ソドムと同様に住民たちは「邪悪で、主に対して甚だしく罪深い者たち」(創13・13)であったため、ソドムと一緒に滅ぼされた。今はソドムの町とともに死海に沈んでいると考えられ…
【ネゲブ】シナイ半島に連なるイスラエルの南部地方を指す。「乾燥した」を意味する「ネゲブ」の名のとおり、全般に乾燥した砂漠地帯。古代イスラエル王国のダビデ王が統一王国を築くまで、アマレク人が居住していた。たんに「南」を意味する言葉としても常…
【ベテル】エルサレムから北、一九キロ程に所在した町。ここで、夢のうちに神が現れたことからヤコブがベテル(神の家)と命名。しかし、現実には偶像礼拝の満ちる偶像の家(ベテ・アベン)だった。エリヤ・エリシャが活動していた時代には、預言者学校があ…
【カナン】地域としては、シリヤ・パレスチナ全域を指す。神がウルから召し出したアブラハムを導かれた地であり、また、出エジプトの民に乳と蜜の流れる約束の地として、新たに示され、また導かれた地である。ヒッタイト人、エブス人、ギルガシ人などが居住…
【ウル】古代メソポタミア南部にあった都市国家。アブラハムの出身地。カルデヤ人と呼ばれる人々が居住しており、彼らは後に、新バビロニア帝国を樹立する。月神礼拝が盛んな地であった。神はそこからアブラハムを召し出し約束の地カナンへと導かれた。
【シンアル】地上で最初の王となった人物ニムロデの王国があったとされる場所。メソポタミアの地域を指すと考えられている。バベルの塔はシンアル(シュメール)の都市の一つに建てられた。命令に背いてアカンが入手した戦利品の中にはシンアル産の外套があ…
【アララテ】ノアの箱舟が大洪水後に漂着したとされる山地の名前。大洪水は第二の月の十七日に始まり、箱舟がアララテに漂着したのは第七の月の十七日とされる。アララテの正確な位置は不明。黒海とカスピ海のほぼ中間にあるマッシス山ではないかなど、様々…
【エデンの園】創造主なる神が、最初の人間アダムとエバのために設けられた楽園。園の中央には「いのちの木」と「善悪の知識の木」があった。ユーフラテス川を含む四つの大河の源流となる湧き水もあったと記されているものの、エデンの園があった正確な場所…